昨日、家に友人を招いた。
家にひとを上げるのは初めてのことだった。
というのも僕は人付き合いが苦手なたちで、
友人は少なく、プライベートに踏みこまれるのをよしとしないからだ。
彼とは趣味であるドールの関係で知り合い、
どうしても僕のコレクションを見たいと云ってきかなかったため、
仕方なく招いたという事情があった。
僕のドールを見るなり、彼は保存状態の悪さを指摘した。
しかしこれには理由があった。愛情をそそぎすぎると、命が宿ってしまうからである。
僕の言葉を、友人は冗談だと思ったらしい。
だとすれば嬉しいことじゃあないか、と笑ったが、僕はとんでもない、と答えた。
きみはどうだか知らないが、僕は気をつかったり思いやることが苦手だから、
ドールが命をもってしまうと、うまく関係を築けないのだ。
僕の真に迫った調子に、友人は顔をさっと青くさせた。
「まさか本気で云っているんじゃないだろうね。
そんなことが起きるわけがないじゃないか!」
だが起こったのだ、と答えると、友人はぎょっとして傍らのドールを見た。
「驚かすなよ。ほら、やっぱり動かないじゃないか」
「それはそうさ」僕は云った。
「なんせ彼女はもう殺してしまったからね。それは死体だよ。
念のため、二度と命が宿らないよう、
愛情をそそぎすぎないようにしているけれどね」
「ああ、驚いた!」友人は悲鳴をあげる。
「どうやら頭がおかしくなってしまったようだ! 僕は帰るぞ」
家を飛び出そうとしたので、僕は彼をひきとめ、首を絞めた。
やはり彼も駄目だった。
これだから人付き合いは苦手である。
彼よりも先に命が宿り、彼よりも先に殺すこととなった彼女と同じく、
死体には必要以上に愛情をそそがぬよう気をつけねばならない。
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